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第1回生涯研修会の報告 学術部 日時: 6月17日(日) 13時30分〜15時30分 会場: クレメントサロン TEL088-656-3211 徳島市寺島本町1丁目61番 テーマ: 「健康心理学について」 〜心理学がとらえる健康とは、心身症へのアプローチ〜 講師: 元徳島文理大心理学科教授 松本博次 先生 研修単位: 3単位 (医学教養0単位・基礎医学2単位・臨床1単位) 参加者: 31名 配布資料「健康心理学について」〜心理学がとらえる健康とは、心身症へのアプローチ〜 を元に、健康心理学の成り立ちの経緯、不安や抑うつの心理背景、気管支喘息や摂食障害など心身症の病態や心理的な治療技法について具体的な事例を多く取り入れ分かり易くご指導いただきました。 1. 健康心理学領域の意義 ・健康の定義・・・身体的、肉体的に健康な状態 過去の生活の出来事の中で、問題点を見つけて解決へ導いていく。過去から積み上げてきて形成された物の見方、考え方、とらえ方に手を加える必要がある。 不健康な部分もあるが、健康な部分に目を向けて広い視点から自分と相手との関係を見直せば不健康な状態には陥らない。 2. 精神的に健康であることの意義 〈精神的に健康な人間の条件とは〉 ・ 自己利益:自分の利益でもあるが他人の利益でもある。 ・ 自己指導:ギリギリまで頑張っていく姿勢。 ・ 寛容性:客観的に見ているようで、自分の都合で相手を見ている。みんなで事例を検討しあって多くの意見を聞いていく。人から意見されなくなったら終わり。口うるさく言ってくれる人が大切。 ・ 危険を冒す:自分を鍛える、そうしないと伸びない。 ・ 自己受容:他人の物差しを知ったうえで自分の物差しを認識していく。 他に、不確かさの受容 柔軟性 科学的な思考 献身 など。 健康な人の測定値(基準値)を計り、平均的傾向を見る。集団を土台とした基準を見ていく。また個人の基準値も見る。 個人の心身の結果は日によって違う、毎回ぶれがある、幅をもって基準を見ていく。全体と個人を見ていく枠組み、検査の結果を長い時間の中で見ていくことも必要。それに応じた対策も立てられる。 3. 精神面での不健康な事例 〈古典的な事例から心のあり方を探る。〉 ・ 神経症理解に必要な心の防衛:抑圧 投影(相手が自分を良く思っていないと考える。本当は自分が相手を良く思っていないからである) 退行 合理化(自分に都合の良いことを考える) 逃避(現実からの逃げ) ・ 神経症の事例:不安神経症 脅迫神経症 4. 心と体の両面を把握しなければならない心身症 心身医学会での心身症の定義:身体疾患の発症に心理社会的な要因が密接に関与していて、器質面や機能面に障害を起こしている病態であること。(久保春人:2007) 5. 日常生活に関連する心身症の事例 ・ 過敏性腸症候群:通勤電車の中でトイレに行きたくなる。自立訓練法、自己暗示での治療。 ・ アトピー性皮膚炎:ストレスが増えると症状悪化。頼まれると断れないが他には頼めない、個人の能力には限界があり、高いサービスを維持するためには心身共に健康を維持していくことが大事。 他に、胃・十二指腸潰瘍、神経性食欲不振症、過食症など。 〈心身症への理解:心身症とアレキシサイミア※〉 失感情症的側面(自分の中で起きている感情的変化に気づかず、それを上手く言葉に表せられない)により、アレキシサイミアの傾向を持つ人は過剰な反応をしてしまう。真面目で良い子でいるために相手の期待に応えようとし無理な努力をしすぎてしまい、身体の症状として現れてしまう。 ※アレキシサイミア:自らの感情を自覚・認知したり表現することが不得意で、空想力・想像力に欠ける傾向のこと。 6. 心身症の病態研究 刺激のストレッサー(当たる側)と、反応側(歪む側)のストレスの区別 〈心理社会的要因と身体機能〉 ・ 社会的再適応評価尺度 ストレスの強さを測るものさし。「配偶者の死」を数値100とし、「結婚」を50、「妊娠」を40などとして、日常生活の出来事がどの程度のストレスが与えられるかを表にしたもの。一年間のストレス合計値が300以上であると危険とされる。 ・ ストレス反応で起こること、ストレスが脳に与える影響 動物実験から得られたストレス対策例 :ネズミに電気刺激を与える実験で、ボタンを押すと刺激が切れることを覚えさせるとストレスが下がる。嫌な事でもコントロールが可能であると分かるとストレスも軽減される。 ・ 精神的に乱れて、欲求不満などで攻撃が誘発されやすい場合にはどうするか 空想によるカタルシス(精神の浄化)よりも気をそらす注意転換が必要である。正常な状態であれば、あれこれと行動して解決していけるが、最初からあきらめや無力感があると何をしてもダメだと抑鬱状態になり行動しようとしなくなる。 社会心理学で相手を説得しようとするとき、上から高圧的に言い過ぎると相手が敵意を抱いてしまう。自分の問題に対して外から強く言われると内面の問題が外へと向いてしまい、非理性的な信念を持ってしまうときがある。 「誰からも良く思われたい」など、過去の生活の中でその人の人生を決定づけてしまうような何かが起こり、それに縛られてしまう事がある。「必ず完全で確実な答えがあるはずだ」という発想や、絶対に動かせない事実という考えは確実な物ではなく金字的なものでしかない。他にもいろんな要素があり人格がつくられている。 恐怖と不安に襲われたときに、頭の中だけで考えてしまうと精神的ダメージが大きくなる。行動に移してみて、上手くいかない時もあるが自分で行動して問題にぶつかっていき、現実的に働きかけていくことで解決策が見つかる。 |