TOP>組織と各部の活動>各部の活動>平成24年度第2回生涯研修会
第2回生涯研修会 学術部長 林崎 隆 日時: 平成24年8月26日(日) 10:30〜15:00 会場: クレメントプラザ5階 クレメントサロン テーマと講師: 10:30〜12:00 「医療過誤の防止について」 (公社)徳島県鍼灸マッサージ師会会長 中野義雄 先生 13:00〜15:00 「腰痛の分類と診断法・治療法」 かじかわ整形外科 院長 梶川智正 先生 研修単位: 基礎医学(2単位)・医学教養(2単位) 参加費: 会員・・・2,000円 会員外・・・4000円 (お昼のお弁当は準備いたします) 申し込締切 平成24年8月23日(木) 申込先 学術部 林崎隆 電話:088-698-6414 携帯:090-8283-2049 メール:spxh8ng9@dune.ocn.ne.jp 総務部 宮本常宏 電話:088-665-3523 携帯:090-4505-6803 メール:m0502@me.pikara.ne.jp 第2回生涯研修会の報告 学術部 日時:平成24年8月26日(日) 10時30分〜15時00分 会場:クレメントプラザ5階 クレメントサロン TEL088-656-3211 徳島市寺島本町1丁目61番【JR徳島駅】 テーマ1:10:30〜12:00『医療過誤の防止について』 公益社団法人 徳島県鍼灸マッサージ師会 中野義雄 先生 テーマ2:13:00〜15:00『腰痛の分類と診断法・治療法』 かじかわ整形外科医院院長 梶川智正 先生 研修単位:【医学教養(2単位)・基礎医学(2単位)・臨床(0単位)】 参加者:35名 今回の研修会は、臨床上、非常に重要な『医療過誤の防止』と、代表的な運動器疾患である『腰痛』についての研修会をおこないました。 『医療過誤の防止について』 公益社団法人 徳島県鍼灸マッサージ師会 中野義雄 先生 東洋医学は副作用が無くて安全な医学だと世間に宣伝されています。施術する我々自身も専門機関で教育を受けて国家資格を取得しているのだから、医療事故や医療過誤により重篤な事態を引き起こすことは無いであろうと日々の施術を行っていることと思われます。 今月(8月2日)国民生活センターより、手技療法による危害の報告が公表され、関係各所に対しては正式に要望書が出されています。これには、無免許の手技療法者も含まれていますが、近年の規制緩和により、年々、鍼灸師は増加してきており、按摩・マッサージ師においては無免許手技療法を行う者も増えてきているようです。 我々、国家資格者が医療の質を問われる時代になってきており、我々自身が襟を正して医療過誤(事故)のない十分に配慮が出来た医療を提供できるようにしていきたいと思います。 〈配布資料より〉 医療は、いかなる場合においても、患者を中心としたものでなければならない。このことは、医療人すべてが了解していることであり、また、近年、インフォームドコンセントやクオリティオブライフなどの考え方の浸透により、内容的にも一層の深化を見ております。 しかしながら、医療過誤は今なお多発しており、なお一層の安全管理が求められております。 とりわけ、初歩的なミスや基本的な管理ミスによる医療過誤が多発し、重篤な事態を引き起こしている事件もあり、医療への信頼を大きく失墜させているケースも多々あります。 医療過誤(事故)の防止は、単に事故の発生を如何にして防ぐかということのみに終始するのではなく『医療全体の質の向上』という、より大きな視点で捉え、根拠に基づく安全性の高い医療の提供に務めるべきである。 〈参考1〉厚生労働省による医療事故(医療過誤を含む)の定義 医療に関わる場所で、医療の全課程において発生するすべての人身事故で、以下の場合を含む。なお、医療従事者の過誤、過失の有無を問わない。 ア. 死亡、生命の危険、病状の悪化等の身体的障害及び苦痛、不安等の精神的被害が生じた場合。 イ. 患者が廊下で転倒し、負傷した事例のように、医療行為とは直接関係しない場合。 ウ. 患者にだけでなく、注射針の誤刺のように、医療従事者に被害が生じた場合。 このように、医療過誤は個人的なミスだけではなく大きな意味でとらえていただいて、これからの安全な施術を心がけていただきたい。定義の中で患者が廊下で転倒したような場合でも、施術所の施設の中であれば救護処置が必要であるとされています。場合によっては賠償責任の負担を負うことになりかねない、そういう責任を負っているんですよということで、駐車場から玄関、施術所に至るまでの管理責任、治療行為から、帰宅後の経過についての全てを含むことになっています。 そこで、基本的な考え方として、知識・技術・安全管理が大きな三本柱になります 1. 医療過誤防止の為の、知識・技術・安全管理 A.病態把握、禁忌症等についての知識 B.手技や刺激量の選択 C.インフォームドコンセント、カルテ管理、リスクマネージメント 鍼灸・マッサージをしてはいけない禁忌症、治療することによって悪化する可能性があるもの、治療の効果が期待できないもの、他の医療を受けた方が効果のあるものを適切な治療を受ける機会を妨げてしまうもの、これが一番大事な知識。 来院してきたときの患者さんの状態、飲酒しているとか、興奮しているとか、熱い風呂に入った後だとか、スポーツなど体を動かした直後だとか、色んな状況を把握して、今からこの患者さんに鍼をしていいのかを知識に基づいて判断しなくてはならない。鍼灸をするにあたっての危険因子を取り除くための知識を常に吸収していただきたい。 医学知識は日進月歩で進んでおり、これからは高齢化に伴って超高齢の方が施術を希望されたとき、成人の生理状態とは違うことを理解しなければならない。新しい感染性疾患とか特異体質的な刺激に対してすごく敏感な症例があることなど、知識として常に吸収されることをお願いしたい。 技術の提供ということについて、鍼灸の刺激量をどのくらいにするのか、診断の中で手技、手法、選穴を考えていると思うが、セオリー通りの治療では合わないことがある。常に患者を観察しなければならない。初診時や状態のおかしいときには刺激量を少なくしなければならない。 よく事故になるケースでは、ほとんどの治療が終わった後で、患者の求めにより更に治療を行うことで悪化させてしまう。技術的にあまり余分なことはしない、最初に定めた診断に基づいて刺激量を提供しないと、途中で足したら刺激がどうゆうふうに増えていくか、刺激にやっと耐えている患者にあと少しの刺激を足しただけで何倍もの刺激となる事があるので、貧血を起こす事例ではそういうケースが多いようです。 鍼灸では選穴や刺激量を全身のバランスを見ながら施術をしていく。常に患者さんの容態を訪ね、気分が悪くなったり疲れがないか、刺激が強くないか、急に汗をかいてきた、などの反応にも気を付ける。症状を良くする前提のもとで、医学的管理の下に患者さんの症状を悪化させないようにしなければならない。 安全管理では、何かあったときにどう対処するか、待合いで発作を起こして倒れたときにも、カルテの管理が重要になってくる。カルテには家族や保護者への連絡先、住所、生年月日、主訴、病歴、既往歴、家族歴、などを記載し来院者の情報を把握しておく。 東洋医学は全人的といわれている。症状だけでなく生活環境や性格、精神的な心の状態も含めて把握する。 2. ひやり・ハット A.施術前 → 飲酒 興奮 入浴 服薬 衰弱 不眠 B.施術中 → 気分不快 発汗 呼吸・脈拍の乱れ 咳 出血 C.施術後 → 気分不快 目眩 立ちくらみ 嘔吐 冷や汗 痛み 3. 医療過誤 ・マッサージの症例:骨折 強刺激(皮下または内出血・筋炎・痺れ)挫傷・打撲・捻挫 症状悪化 ・鍼灸の症例:気胸 火傷・化膿 折鍼 出血・内出血・青あざ 症状悪化 ・施設設備による症例:医療器具による火傷・内出血 転落・転倒による怪我・骨折 4. 過誤? 帰宅後に電話が...! ・ 患者(家族又は代理人)から被害の申し立て ↓ ・ 患者(家族又は代理人)との話し合い 初期対応 ↓ ・ 損害賠償責任の有無・程度の検討 ↓ ・ 賠償額の算定→示談交渉 5. 防止策 @ 医療面接とインフォームドコンセントの徹底、主訴・現病歴・既往歴・家族歴の把握 A カルテ・経過記録を具体的に記載、施術部位と内容、施術の種類・期間 B 患者との十分な対話 C 安全の為の管理体制の構築 〈配布資料より〉 医療社会においては、近年の医学や医療技術の進歩発展が、医療の質を高め、更には医療行為の複雑化をもたらし、その結果、医療従事者に高度な知識や技術が求められるようになってきました。 我々の業界においても、より質の高い治療技術が要求されるとともに個人情報の管理や危機管理が求められ、特にリスクマネージメントが重要視されています。 不況下の状況においては、投資効果(治療費の価値)が強く求められる中、高度な医療サービスを求める反面、期待に反した場合のクレームなどが顕著になってきております。特に健康被害等について賠償を迫られる場合も多く「あってはならない医療事故・医療過誤」によって、あはき業務に対する信頼が決して揺らがないように努めるべきであります。 『腰痛の分類と診断法・治療法』 かじかわ整形外科医院院長 梶川智正 先生 腰痛に対する診察とは 1.まず問診 @年齢、職業、 Aいつから痛いのか? Bどの部位が痛いのか? C痛みは持続的なのか? Dどの程度歩けるか? E熟睡できているのか? 2.視診 指針で大事なのは、「声かけ(呼び込み)をしてから診察室までの時間、入室時の姿勢、そして入室時の第一声である。」 私的意見ではあるが、問診、視診で7割〜8割の診断は可能であると考える。 コミ二ケーション能力と的確な質問を投げかけることが重要である。 ※問診では強い痛みを訴えていても、自力で診察室まで普通に歩いてくる方もいれば、呼び込みをしても待合室で動けなくなっている方もいる。診察室に入ってくるまででも痛みの程度を把握することが出来る。また、小中高のスポーツ傷害などでは、試合への出場機会に影響する為、本人が痛みを我慢しているケースもあるが、診察時の痛みへの反応を注意して観察し本当の痛みの程度を見逃さないようにする。 3.触診 徒手検査:SLRT(下肢伸展拳上テスト) FNST(下肢神経伸張テスト) MMT(徒手筋力テスト:0〜5の6段階) 反射:上肢:上腕二頭筋、上腕三頭筋、腕橈骨筋腱 下肢:膝蓋腱、アキレス腱 病的反射:上肢、下肢 ※実際にモデル患者へ徒手検査を行い、検査時の注意点やコツ(SLRTでは下肢を少し内旋すると反応が出やすいこと、など)を説明。 4−1.検査 原則はまず、腰椎レントゲン。通常正面、側面の2枚、分離症、疲労骨折などを診る場合は、両斜位の2枚追加。さらに辷り症などは側面の機能撮影(前屈、後屈)を追加する。2〜6枚ということになる。CTは、外傷による脱臼骨折、脊髄腔造影(ミエログラフィー)後、後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症などの靭帯骨化。 4−2.検査 MRI:椎間板ヘルニア、脱髄性疾患、腫瘍、圧迫骨折。 最近では、西良らが少年期の腰椎分離症の初期の診断に有効と報告している。 ただし、MRI万全とゆうものではないということも頭に入れておかなくてはならない。 【腰痛で考えられる疾患】 1. 乳幼児 2. 学童期、青年期 筋・筋膜性腰痛症、腰椎分離症・分離辷り症、腰椎疲労骨折、腰椎終板障害、腰椎椎間板障害 腰椎椎間板ヘルニア、突発性側わん症 3. 実年期 腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊椎間狭窄症、腰椎変性側わん症、腰椎圧迫骨折、脊椎・脊髄腫瘍 4. 高齢者 胸椎・腰椎(多発性)圧迫骨折、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、変形性脊椎症 【腰痛でだまされてはダメ!】 1.高齢者の胸・腰椎多発性圧迫骨折 ⇔60歳以上、短期間での症状出現、多発性骨髄腫(血液疾患)を考えよ! 2.上位腰椎の高さで叩打痛 ⇔尿管結石、腎結石といった泌尿器疾患を考える。 3.椎弓がはっきりしない ⇔転移性腫瘍もしくは骨腫瘍を考える。 4.女性 ⇔子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮・卵巣腫瘍、膀胱腫瘍 5. 帯状疱疹(※水泡は一週間以内に出るので、水疱の有無を確認する) 【腰椎の基本的構造】 頚椎:原則7つ、前わん 第一頚椎:環椎 第二頚椎:軸椎 胸椎:原則12、後わん 腰椎:原則5つ、前わん 〈別紙配布資料での説明〉 @脊椎の機能解剖:脊椎の生理湾曲(頚椎前わん、胸椎後わん、腰椎前わん) A繊維綸:椎間板の繊維綸の構造とヘルニアの病態・分類 Bアライメント:腰仙角ライン(通常30度)、腰仙角の異常とストレス C腰椎椎間板ヘルニアの分類:消失するタイプのヘルニアについて D立位を100%としたときの椎間板内圧の相対的変化 :座位で約150%になり立位よりも負担が多く、中腰姿勢では椎間内に最大の圧がかかる。 Eジャックナイフストレッチの実際 :しゃがみ姿勢で両足首を両手で持ち、踵が浮かないように徐々に下肢を伸展していく。 【腰椎椎間板ヘルニアの保存療法】 神経痛の痛みが軽い場合には痛み止めが有効である。牽引療法は牽引の加減では痛みが強くなることもあり、特に高齢者の脊柱管狭窄症には牽引は原則禁忌であるので注意が必要。 【腰椎椎間板ヘルニアの手術療法】 保存療法で6〜8週間で痛みが軽減しなければ手術の適応となるが、誰しも手術は敬遠するが早く社会復帰を希望する方や、痛みが強く日常生活に支障が出ている場合に手術を選択することとなる。 気をつけなければいけないのは痺れを中心とする場合で、手術の成功する確率は半々であり判断は難しく慎重に行わなければならない。 【腰部脊柱管狭窄症】 症状:神経根型、馬尾傷害型、混合型 中でも神経根型が多く診られ、代表的な症状の間欠性破行は荷物を持って歩いた時に起こることが多く灼熱感を訴える人もいる。注意しなければいけないのは、血管性の疾患でも間欠性破行が起こることもあるので、足背動脈や後脛骨動脈(内くるぶしの下)の拍動の有無を調べる。 その他、分離症・分離すべり症、脊椎圧迫骨折の病態、診断での注意点、治療、についての説明。 “医療法人 かじかわ整形外科のモットーとは?” 地域住民の方々が、疾患をもったままでも安心して住み慣れた地域で生活していくことのできるよう、手助けの一助を担うことである。 『医療過誤の防止について』では、病態把握や禁忌症等についての知識、医療過誤防止の為の、知識・技術・安全管理など、具体例を交えながら医療過誤の防止の為に必要な重要点をご指導いただきました。 『腰痛の分類と診断法・治療法』では、腰痛に対する診察の実際、触診では徒手検査のコツなど、知識だけでは知り得ない診断のポイントをご指導いただきました。腰痛を引き起こす疾患について各々の病態、診断での注意点、治療については大変参考になりました。 今回の研修会は、午前・午後の二部構成の受講となりましたが、二つのテーマ共に、我々が診療・施術を行う上で最も重要な位置を占める内容だけに、大変有意義な研修会となりました。 |