公益社団法人 徳島県鍼灸マッサージ師会ロゴ

TOP組織と各部の活動各部の活動>平成23年度第7回生涯研修会

第7回生涯研修会の報告


学術副部長
加藤 博司


今回の研修会は、東洋医学会と共催し4題を講演していただきました。


日時:
平成24年3月18日(日)
13時〜16時30分


会場:
クレメントプラザ5階 クレメントサロン


テーマ:
13:00〜13:30
「冷えに対しての漢方治療」
医療法人東洋病院 清水輝記 先生

13:30〜14:15
「耳鍼の有用性について」
岡内内科 岡内宣三 先生

14:30〜15:30
「呼吸器の漢方〜短期決戦のコツと使い分け」
医療法人たかはし内科 高橋浩子 先生

15:30〜16:30
「患者指導に応用できる藥膳について」
医療法人東洋病院 栄養部栄養課長 竝川祥子 先生


研修単位:
医学教養(1単位)・基礎医学(2単位)・臨床(1単位)


参加者:
35名



「冷えに対しての漢方治療」
医療法人東洋病院 清水輝記 先生

漢方のものさし〈 病態を把握するための基本概念〉
◆ 病態の性質をはかる尺度 ―――――――― 陰陽・虚実・寒熱・表裏
◆ 循環要素の異常をはかる尺度 ―――――― 気・血・水
◆ 病態の変化(ステージ)をはかる尺度 ―― 六病位

【漢方診療のキーワード】
・気
---働きがあって形のないもの。
血や水の作用発現にも関与。
目には見えないが働きがあるもの。(エネルギー)

・血
---実体としては血液を指し、各種の作用発現の物質的基盤となるものと考えられる。
栄養代謝物質の意味もある。

・水
---血液以外の体液の総称。


【冷え症は怖い】
◆冷え症は万病のもと
月経困難症・胃痛・肩こり・月経前緊張症・頭痛・腰痛・膀胱炎・下痢・アレルギー性鼻炎

◆除外診断が大事
貧血 ――――――――――― 動悸・息切れ
甲状腺機能低下症 ――――― 便秘・全身倦怠感
関節リウマチ・膠原病 ―――― 関節痛・微熱・皮膚硬化


【冷えの処方】
・下半身が冷える
・胃腸が虚弱
・月経異常
・抹消の冷え しもやけ/下腹部などの疼痛
漢方薬と鍼灸を併用することで効果が上がる。漢方治療だけに頼ることなく、日常の生活上で病の原因となることがあれば、出来ることから改善していくように指導することも必要である。




「耳鍼の有用性について」
岡内内科 岡内宣三 先生

◆耳穴による診断・治療法(耳穴療法)は、悠久の歴史を有しています。
耳穴療法は、四診・八鋼弁証などの中医理論にもとづき、耳穴のツボを通じて疾病を診断・治療する方法であるが、予防や美容など様々な面に応用することが出来る。

治療方法は簡単でかつ効果が高い。適応症が広く即効性があり施術しやすい。また、副作用や損傷が少なく経済的にも安価など優れた点が多い。


【耳穴療法の利点】
@ 適応症が広い
A 効果が早い
B 操作が簡単(除痛、止痒、救急対応、解熱)
C 学びやすい、わかりやすい
D 経済的
E 副作用が少ない
F 鑑別診断ができる
G 疾病の予防
H 麻酔に用いる
ただし、耳針療法にも限界はあり、症状を軽くするだけで、治療効果を十分に強固にすることが出来ない場合もあります。(肺気種、慢性腰腿痛など)
耳穴療法を実践するにあたっては手技的要素を十分に発揮して、必要に応じ体針、漢方、西洋薬やその他の治療を組み合わせることを考慮することが大事である。


【取穴の原則】
@ 相応部位、疾病の部位に応じて取穴する
A 伝統医学による取穴(臓腑理論、経絡の流注にもとづく選穴)
B 現代医学による取穴(疾病の原因を分析して取穴)
C 特殊効能による取穴 陽性反応点(変色、変形、通電抵抗の変化)
D 経験による取穴(耳尖からの瀉血、高血圧、高熱、痛みなどの治療)


【適応症】
@ 疼痛性疾患
外傷性疾患(捻挫、骨折、刺し傷、火傷、壊疽)、手術後(術後の痛み、幻肢痛等)
炎症性疾患(リュウマチ、扁桃炎など)、神経性疾患(三叉神経痛、帯状疱疹など)、腫瘍性疾患
A 炎症性疾患
頭顔面部に発症する疾患、呼吸器系疾患、生殖器系疾患、消化器系疾患、関節リウマチ
末梢神経炎、顔面神経麻痺
B アレルギー性疾患、膠原病
免疫機能を高める効果がある
C 内分泌代謝、泌尿生殖器系疾患
生理機能を調節し症状を改善させることが出来るため、薬物量を減量させることがある
D 機能性疾患
神経系に対して拮抗的な働きを起こすことがあり、神経症状の緩解や治療を促進させる効果がある
E 各種慢性疾患
薬物療法であまり効果が現れないような症状にも効果があることがある
F 感染症
鎮静、解熱、鎮痙、鎮痛、の作用とともに免疫機能を高める作用がある


【禁忌症】
@ 耳介に湿疹、潰瘍、凍傷など重度の炎症がみられるとき
A 重篤な器質性疾患、重度の貧血、心臓疾患には電気針や強度の刺激をさけ、貼圧法を用いる
B 妊婦の耳針治療は慎重にするべきである。特に流産の既往歴がある場合、耳針治療は禁忌である




「呼吸器の漢方〜短期決戦のコツと使い分け」
医療法人たかはし内科 高橋浩子 先生

“漢方薬は弁当だ“ 漢方薬を説明するときは弁当を例にあげて説明している。
弁当のメインは何か? メインのおかず(生薬)によって弁当(漢方)の性質が変わってくる。

生薬が集まって漢方薬が形成されている。

呼吸器の患者さんを診るときは急を要するケースがほとんどなので処置も待ったなしである。

一回の治療で楽にしてあげることが出来なければ、次回への来院に繋がっていかない。


【咳・痰・喘息の漢方】
熱痰・・・肺や気道に炎症あり、黄色痰・濃い
燥痰・・・乾いた痰、切れが悪い、秋や暖房の時期
寒痰・・・うすい痰・くしゃみ・鼻水・寒気、寒冷刺激で出る冷え症のもの
湿痰・・・白色痰・多痰


【西洋薬の去痰薬】
・気道粘液溶解薬:喀痰の分子結合を開裂させ粘調度を下げる---ムコフィリンビソルボン

・気道粘液修復薬:粘液の異常な分泌を修復し正常な気道粘液に近い状態にする---ムコダインクリアナール

・気道潤滑薬:気道粘液分泌を増やし喀痰と気道の粘着度を下げる---ムコソルバン


【鎮咳作用を持つ生薬】
・主に中枢性鎮咳作用:半夏、百部、款冬花
・主に気管支拡張作用:麻黄、厚朴、地竜
例)ュ甘姜味辛夏仁湯の構成
・利水・・・茯ュ、杏仁、細辛 ・散寒・・・乾姜、細辛 ・鎮咳・・・半夏、五味子、細辛、杏仁


【呼吸器科の漢方薬】
〈 呼吸器科で処方される各漢方薬の生薬構成、効果の機序、適応症について説明 〉


★呼吸器科の漢方薬の処方は、熱・燥・寒・湿に分類し使い分ける。
熱・・・肺や気道に炎症あり、黄色痰・濃粘痰・熱感
燥・・・乾いた痰、切れが悪い、秋や暖房の時期
寒・・・寒冷刺激やアレルギーで出る薄い痰・くしゃみ・鼻水・寒気、冷え症のもの
湿・・・白色痰・多痰




「患者指導に応用できる藥膳について」
医療法人東洋病院 栄養部栄養課長 竝川祥子 先生


薬膳とは…
中医学の理論に基づいて、生薬やその他の薬用価値の高い食物などをうまく組み合わせて調理した伝統的な栄養食


【薬膳の特徴】
薬膳は『医食同源』の思想が基本

『黄帝内経太素』に「五穀、五果、五畜、五菜、これを用いて飢えを充つときこれを食といい、以てその病を療するときはこれを薬という。」という項目があります。
『神農本草経』には365種の薬剤が掲載されており、性能・使用目的に応じて薬物を、上品、中品、下品に分類している。
上品・・・120種、これを君とし命を養うことを主とし天に相応する。
これには毒がなく長期にわたってあるいは量を多く服用しても害がない。
中品・・・120種、これを臣とし性を養うことを主とし人に相応する。
     これには病を防ぎ身体を補う力があるので毒の有無を知って用いるべし。
下品・・・125種、これを左使とし病を治すことを主とし地に相応する。
     これには毒が多いので長期の服用は慎まなければならない。
※ 食物は、お腹を満たすだけのものではなくて用い方によっては病を治す薬になる。

【 種 類 】
・『疾病治療薬膳』--- 病気治療を目的とする。
・『食養・食療薬膳』--- 病気の予防や体質改善を目的とする。
 同じ病気だからといって同じものを処方するわけではなく、疾病治療のための薬膳は高度な知識を必要とする。よって、即、病気の治療を目的とするものではなく、体質を補正し、病気を予防し、健康を維持するための食事ととらえていいでしょう。

【食べ方について】
・一物全体:『全体』の効用を重視する(すべてを食べる)
・以類補類:同じ物を以て治すという考え方(肺病には肺を、肝病には肝を食べる)
・身土不二:人は与えられた風土と一体となるのが自然
(生活している所の食材を摂るのが理にかなっている)
※ 海外より入ってきた食文化が日本の風土に適していないために起こっているのが生活習慣病ではないか。

【食物のとらえ方について】
 食物の性・・・食物には、熱・温・平・涼・寒の五気があるが、大きく分けて三つに区分する
・寒性:体を冷やし、鎮静、消炎の作用がある。のぼせ症や血圧の高い人によい性質。
・熱性:体を温め興奮作用がある。貧血や冷え症の人によい性質。
・平性:寒・熱のどちらにも属さない平凡で穏やかな性を持つ食物。

【食物の五味】
・酸味の効用(収・渋)
:肝を養い、出過ぎる物を渋らせ、筋肉を引き締める。消炎、寝汗、下痢、頻尿などに有効。
  過食するとその収縮作用によって体内からの発散が妨げられます。
・苦味の作用(瀉・燥)
 :心を養い、乾かし固める働きがあるので、熱をとり体内の湿気をとり、のぼせの症状に有効。
  過食をすると陽気を損なう。
・甘味の作用(補・緩)
 :脾を養い、人体の衰えをよく補養し、緊張を緩め、痛みをとり滋養強壮の働きがある。
  過食をすると、全身だるく脾の作用が衰える。
・辛味の作用(散・行)
 :肺を養い、体を温め気血のめぐりを良くし、滞っているものを発散させる働きがある。
風邪などに有効。
 ・鹹味の作用(下・軟)
  :腎を養い、しこりを和らげ潤し軟化する働きがある。便秘、リンパ腺の腫れなどに有効。
  過食をすると腎精を弱める。

【実践編・体質改善の薬膳】
・寒熱のバランスをとる
 寒証の人は熱・温性の薬物や食物を、熱証の人は寒・涼性の薬物や食物をとる。
 季節によっても体の寒熱は左右されるので環境と体の状況を判断する。
・気、血、津液のバランスをとる。
・臓器の調整をする。

【病気に応じた薬膳】
長寿薬膳、風邪薬膳、高血圧薬膳、糖尿病薬膳、リュウマチ薬膳、腎臓・肝臓・心臓の薬膳、
について各薬膳のレシピを配布。

 薬膳の基礎知識をしっかりと習得し、患者さんの実状(生活習慣)を知り、改善できるところから
(味覚、食材の色彩など)実行していく。中国の薬膳についての食習慣をそのまま使うのではなく、日本人に合った食材の取り方を考える。


 今回は、東洋医学会の皆様にも多数ご参加いただきまして、4題の講演をしていただきました。
時間の都合上、先生方には限られた短い時間ではありましたが、それぞれに臨床で培った経験を基にした貴重な講演内容でありました。


会員の個人情報に関するお取り扱いについて