TOP>組織と各部の活動>各部の活動>平成23年度第6回生涯研修会
第6回生涯研修会の報告 学術副部長 加藤 博司 日時: 平成24年2月19日(日) 13時00分〜14時30分 会場: 徳島ワシントンホテルプラザ 2F若竹の間 TEL 088-656-3166 徳島市大道1-6-1 テーマ: 『歯周病と全身疾患』 講師: 松本歯科小児矯正歯科医院院長 松本 拓哉(まつもと たくや)先生 研修単位: 2単位 (医学教養0単位・基礎医学2単位・臨床0単位) 参加者: 37名 今回の研修会は、2月18(土)〜19(日)に本県で開催した四国ブロック協議会に合わせて、四国合同研修会として各県の先生方にも参加いただいて、全身疾患とも関連の深い歯周病について行いました。 【歯周病とは..?】 歯周病とは、細菌が原因で起こる歯肉の慢性病変で、歯を支えている骨や歯肉組織を破壊してしまいます。 原因は、歯の表面に付着する細菌からなる歯垢(プラーク)です。 プラークを除去しないと石灰化して歯石に変化します。正しいブラッシングやフロス、歯間ブラシ等を使い毎日口腔ケアをすることでプラークの形成を防ぐことができます。 しかし、歯石に変化してしまうと歯科医院で器具を用いて除去しないかぎり取り除けません。 【歯周病と全身疾患】 1. 糖尿病 歯周病がひどくなると炎症によって出てくる物質(TNF-α)が、インスリンの血糖値を下げる働きを妨げて、糖尿病を悪化させるといわれています。 最近では歯周病を改善すると糖尿病の状態もよくなるというデータも報告されています。 2. 動脈硬化・狭心症・心筋梗塞 歯周病菌が心臓の内膜に付着すると心内膜炎を引き起こすこともあり、さらに、歯周病菌が動脈硬化を起こしている血管に付着すると血管を狭める作用を促進すると考えられており、歯周病菌が心臓病のリスクを高めることもわかってきました。 3. 早産、低体重児 歯周病の炎症で出てくるプロスタグロンジン(子宮の収縮などに関わる生理活性物質)などの物質が、胎盤に影響するためであると考えられています。女性と歯周病の関係では、妊娠・出産や閉経後に増える骨粗鬆症などが深く関係していることがわかってきました。 4. 肺炎 食べ物や唾液が誤って肺に入っておこる「誤嚥性肺炎」をおこした人から、歯周病菌が多く見つかるため、歯周病菌が誤嚥性肺の重大な原因の一つと考えられています。 口の中を清潔にし、歯周病を予防することが、肺炎を防ぎ、命を救うことにもつながります。 5. 認知症 脳卒中は、動脈硬化が脳の血管でおこるものですから、予防は動脈硬化を防ぐことが大切なポイントになります。 歯周病を防いで動脈硬化のリスクを減らすことが、脳血管性の認知症を減らすことになります。 アルツハイマー型認知症では、残っている歯が少ない人ほど脳の萎縮が進んでいたという報告があります。 噛むことが脳を活性化するので、歯周病を予防し歯を保つことはアルツハイマー型認知症を防ぐことにも影響しています。 6. タバコと歯周病 タバコを吸うと、歯や歯茎にニコチンなどの有害物質が悪影響を与えて、身体の抵抗力を弱めたり、末梢の血管を収縮させて歯茎の血液循環を悪くしたりします。 また、タール(ヤニ)が歯にこびりつくと、歯磨きでは簡単に取れず歯垢がつきやすくなり歯周病にもなりやすくなり治り難くもなります。 【歯周病の進行段階】 T期 歯肉炎 :歯茎に炎症が起こり赤く腫れる、見ただけではわからない。 ↓ U期 軽度歯肉炎 :歯肉ポケットができ歯垢や歯石がたまる、歯茎から出血したり膿が出ることもあり、歯槽骨が溶けはじめる。※歯槽骨は一度溶けると元には戻らない。 ↓ V期 中等度歯肉炎 :炎症が奥まで進み、歯茎がぶよぶよした状態になり、血や膿が出て口臭もひどくなる。歯槽骨もかなり溶けて歯がぐらついてくる。 ※本人が気づく段階、手遅れの場合が多い。 ↓ W期 重度歯肉炎 :歯周病の末期症状。歯槽骨がほとんど無くなって歯根が露出する。ものを噛むことが出来なくなり、歯が抜けることもある。 ※抜歯するしかなくなり、横の歯にも悪影響を与える。 【歯周病の治療】 @ ブラッシング・・・バス法(プラーク除去に効果的な磨き方)、歯磨きの補助として(デンタルフロス、歯間ブラシ、タフトブラシ) A スケーリング・・・超音波による歯石除去。振動を与えて大量についた歯石を取りのぞく。 B ルートプレーニング・・・手作業の器具により深いところや狭い部分についた歯石を除去。 C 歯周外科・・・スケーリングでも改善されない場合にプラークや歯石の除去を外科的に行う。 D 再生療法・・・歯肉(歯茎の移植)、骨の再生。 私たちの臨床でも、歯の痛みを訴える患者さんに遭遇することも多いと思います。主に肩こりに関係して歯の痛みを訴えている場合が多いようですが、歯のトラブルや歯周病が、全身疾患の原因となる可能性を考えて、適切な処置とアドバイスが出来るようにしたいものです。 今回は、四国ブロック協議会に合わせた四国合同研修会ということで、各県の先生方にも多数参加していただき、各県相互の交流を深める良い研修会となりました。 |