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第5回生涯研修会の報告


学術副部長
加藤 博司


日時:
11月20日(日)
14時〜16時


会場:
徳島ワシントンホテルプラザ2F
若竹の間

TEL
088-656-3166

徳島市大道1-6-1


テーマ:
「地域社会と臨床心理学の関わり」


講師:
徳島文理大学人間生活学部 心理学科教授
島 浩伸(しま ひろのぶ)先生


研修単位:
3単位
(医学教養2単位・基礎医学1単位・臨床0単位)


参加者:
会員38名
一般4名



今回の研修会は、徳島県鍼灸マッサージ師会の公益社団法人への移行の記念講演として、徳島文理大学人間生活学部心理学科教授、島浩伸先生を講師にお招きして、「地域社会と臨床心理学の関わり」について、ご講演をしていただきました。
講演中の島浩伸先生

〈臨床心理学とは何か〉
精神疾患や心身症、心理的問題・行動の援助・解決・予防・研究、あるいは人々の精神的健康の保持・増進・教育を目的とする心理学・応用心理学の一分野である。
1.心理査定 2.心理面接 3.地域援助 4.調査研究の四種の領域に大別される。


1. 心理査定
「診断」は、診断する人の立場から対象の特徴を評価するのに対して、「査定(アセスメント)」は、査定される人の立場から、その人の特徴を評価する専門行為に主眼がおかれています。

(※「診断」とは病名をつけることであり、「査定」は病態をつかみ解決へと導くことを意味する。)

 つまり臨床心理査定とは、心理テストや観察面接を通じて、個々人の独自性、個別性の固有な特徴や問題点の所在を明らかにすることを意味します。また同時に、どのような方法で援助するのが望ましいか明らかにしようとしています。


2.心理面接
臨床心理士と依頼者との人間関係が構築される過程で“共感・納得・理解・再生”といった心情が生まれる貴重な心的空間です。そして依頼者の特徴に応じて、さまざまな臨床心理学的手法を用いて依頼者の心の支援に資する臨床心理士のもっとも中心的な専門行為です。


3.臨床心理的地域援助
特定の個人を対象とするだけでなく、地域住民や学校、職場に所属する人々(コミュニティー)の心の健康や地域住民の被害の支援活動を行うことも臨床心理士の専門性を生かした重要な専門行為です。


4.調査研究
心の問題への援助を行っていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施します。なかでも“事例研究”の体験学習は、臨床心理士に求められる大切な専門業務と直結しています。

〈臨床心理士の職域〉
・ 医療・保険分野(病院、診療所、保健所、精神保健福祉センター、市町村福祉センターなど)

心の問題で不適応に陥っている人、病気やけがなどをしている人への心理的援助。
・ 司法・矯正分野(家庭裁判所、刑務所、少年院、保護観察所、警察関係など)
社会的処遇を決定する際の心理的側面に関するテストや調査、矯正に向けての心理面接など。

・ 労働・産業分野(企業内相談室、安全保険センター、ハローワークなど)
職業生活の遂行の為に、面接や職場内のコンサルテーションや職業の適性に関する心理的援助。
講演中の島浩伸先生・・・2


〈地域で活躍する臨床心理学の歴史的背景〉
・ 職業としての臨床心理学の誕生
第二次世界大戦からの帰還兵の40%が、専門的治療を要する何らかの精神障害を有したことにより、精神科医の絶対的不足からアメリカ医学界はアメリカ心理学会に協力要請を行い、医師の指導の下で患者の治療を行う医師に準ずる役割として職業としての臨床心理学が始まった。



〈コミュニティ心理学〉
・ コミュニティ心理学の定義
『コミュニティ心理学は、人間行動の諸問題に対する1つのアプローチである。そのアプローチには、人間行動の問題は環境の力によって生成され、また、その環境の力によって人間行動の問題が軽減されるという、環境の潜在的寄与を強調している。』(ザックスとスペクター:1974)

コミュニティ心理学の理念と目標は、人が本来持っている強さと有能さを尊重し、色々な人が存在して社会を形成している多様性を尊重し、治療より予防を重視することで疾病や障害を初期段階で見つけ(スクリーニング)効果的な治療(二次予防)を施すことを目的としている。
早期発見・迅速介入でコミュニティ全体への波及防止を計る。



〈地域臨床心理学の実践のために〉
進学、就職、恋愛、結婚などの人生の節目では、さまざまな問題に遭遇するが、習慣的な認知の仕方や課題解決法では対処できない危機的状況(事故、災害、離婚、配偶者との死別)を打開するためのさまざまな試み。

・ 危機介入法
危機状態に陥っている個人や団体に対して、対象者の「安全」に注意を払い、即時の介入を目指して直面する問題の解決に焦点を当てて具体的な目標を設定するようにする、短期に終結する相談活動。問題点としてカウンセリングを拒否される場合もある。

・ セルフヘルプ
セルフヘルプとは、本人による本人のための活動を意味する。
犯罪被害者の会、交通事故遺族の会、アルコール依存症患者の会、精神障害者の会など、ある特定の困難や問題、心の傷を抱えた当事者達が自らの現状を自らで修正、改善する意志をもって集い活動をするものである。
兄弟に障害者を持つ人達の集まりでは、年長者が中心となり問題解決のサポートにあたっている。



〈地域で活躍する臨床心理学〉
・ 学校領域における地域臨床心理
スクールカウンセラーを配置し、いじめ・不登校・学級運営・発達障害への対応などについて、児童生徒および保護者や教職員の臨床心理相談を行う。
いじめ問題では、責任がどこにあるのか明確にならないことがあり、見て見ぬふりをして問題を悪化させる事例もある。

・ 福祉領域における地域臨床心理
高齢者福祉においては、独居老人の生活構造の調査や、高齢者の介護、認知症、家族関係などを調査することで、虐待などの問題が起こる可能性が見えてくる。

・ 労働・産業領域における地域臨床心理
家族システムが上手く機能してない場合に、家族の支援を得るための面接、職場復帰プログラムへの関与を行う。



今回は、地域社会の中で臨床心理学がどのような働きをしているかご講演いただきました。
学校や病院、職場や地域社会のコミュニティで、危機管理と問題解決のプロフェッショナルとして活躍している臨床心理士の活動事例も紹介していただきました。
心理学の分野は難解なイメージもありましたが、限られた時間の中で多くの事を伝えようとする気持ちが伝わり、心理学が日常生活に深く関わり、私達の安全な生活を支えてくれている身近な存在であることに気づきました。
お忙しい時期にもかかわりませずご足労いただき貴重なご講演をいただきありがとうございました。




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